ネバエンジャ

楽しく生きよ

TRANCEVERSE ORIENTATION(トランスヴァース・オリエンテーション)

ディミトリス・パパイオアヌーの「トランスヴァース・オリエンテーション」観に行ってきました。

 

 

前回の公演「THE GREAT TAMER」も観に行ったんですが、今回はそれよりも人が増えていて…当日券販売カウンターは列ができていました。

私は販売開始と同時に購入していたので一番前のど真ん中!ひゃっほう!✨

 

 

舞台にあるのは小さな蛍光灯とドアが一つずつついてる白い壁だけ。

たったそれだけの舞台が、なんだか異次元のような、見てはいけないような世界にぐるっと変わるから不思議。

 

ディミトリス・パパイオアヌーの作品はジャンル的に何に振り分ければいいんだろう…。「舞台芸術」と言うしかないんだよな…。芸術って言葉あまり好きじゃないんだけど、ダンスするわけじゃないし、演劇をするわけでもないし…。

一切セリフもないまま、説明もないまま、ただ舞台上の人たちがわーって動いたりぴたって静止したり…。

でも、これが凄いんだよ本当に。

観た感想を言葉にすることはどうしても難しいので、もしまた新作を携えて来日されるような事があれば、気になる方は実際に観てほしい。

特に、性格的に感情や思ったことを吐き出すのが苦手だという人は刺さりやすいと思う。

ピナ・バウシュと比べると「感情」よりも「物語」に重きを置いてるように感じるけれど、どちらも言葉は無いのに、言葉以上に感情を吐き出してくれてなんだかつきものが落ちたような、スッキリした感覚になる。

 

昔水族館に行ったとき、大水槽の前で親子連れやカップルがきゃいきゃい盛り上がる中、ソファの隅っこで、独りぼーーーっと魚を見ているお兄さんをみかけたことがある。

もうほんと虚無の表情で、壁にもたれて魂が抜けきったみたいな。

そういう感じで、何も考えずに感じるままに観てもらいたい。

 

感想は難しいので、ここでは舞台装置の凄さとありのままに見たものをまとめておこうと思います。

一応出てきた順に書いていく。曖昧ですが…。

それくらいしか…形として残しておけるもんが無いんだよ・・・・・・・・

 

・マネキン?

丸い風船みたいな小さな頭に、人の体がついたスーツ姿のひょうきんなマネキン。

演じてるのはもちろん人間。

コロンコロン、みたいな音を出して動く。わかりやすく言えば映画泥棒みたいな?

顔が無いのになぜか視線を感じる不思議。

 

 

・牛

作り物の等身大の黒い牛。黒い牛に密着する演者によって自然に動かされるんだけど、これがまるで本物同然で、一番前の席にいたが故に圧倒されるというか…本物の牛が迫ってくるみたいでちょっと怖かった…。

牛の腹から裸の女性が生まれ落ちる。

(演者は舞台の上で一糸まとわぬ姿になったり服を着たりする。本当に一糸まとわぬ姿。下着もつけていない。男も女も全部丸出しである)

 

 

・ライト

何故かスーツ姿の男が突然舞台用照明を台車に乗せて歩く。

シュールなんだけど、その逆光で裸体の男女や牛、あとから現れる舞台装置のシルエットをきれいに照らす

 

 

ミノタウロス

牛の頭を被ったスーツ姿の男。

演者たちは全員ダンサーなのでスタイルいいんですよね・・・。

頭が牛なのに妙にスタイリッシュでかっこよかった。

 

 

・ダイバー?

何故か牛の傍を謎のダイバーが泳いで横切る。

前の「THE GREAT TAMER」もそうだったけど、この舞台はちょっとしたものをまるで本物のように錯覚させてくる。動きと見せ方がとにかく巧みすぎる。

牛が陸にたたずむ一方、横切るダイバーだけ別次元のように、水の中にいるようにゆっくりと、すい~~っと横切っていく

これまたシュール

 

 

・ダイバーと水しぶき

スーツ姿の男が、泳ぐダイバーに水をかけながらダイバースーツを脱がしていく。

でもここでかけているのは水ではなく、丸い透明の玉。消臭ビーズのでかい版みたいな。

バケツいっぱいの消臭ビーズを、白い照明に照らされる中ダイバースーツの男に向かってボロボロぶっかけながら脱がしていく。

真っ暗な中、その2人だけを照らす白い照明のおかげで消臭ビーズはキラキラ輝きながらぽよんぽよん跳ね回って、まるで水が跳ねているように見える。

本物の水を使った見せ場もこのあと登場するのに、ここでは消臭ビーズを水に見立てて本物の水よりも水らしい、神秘感を出していた。

消臭ビーズっていうとまぬけだけど!笑

 

 

・岩

神話や夢の世界のように裸体の男女や牛、ダイバーたちが漂う中、まるで現実に戻ったように今度はスーツ姿のキャストが登場。さっきまで全裸だった人達である。

近くのドアからノックの音、開けてみるとみっちりとドアをふさぐ岩…。

その岩がどんどん部屋のなかに入ってきて、そこからまたスーツ姿のキャスト達がまるで生まれてくるようにどんどん出てくる…。

最終的には5、6人ほど出てきてみんなで岩を積み上げ始める。

岩の砦みたいなものを作ったと思ったら岩は突然総崩れ…。

 

その後、スーツの人たちは一斉に服を脱ぎだして、岩で「きゃっほーーう!!」と遊び始める。それはもう楽しそうに。

なんだかよくわからないけど楽しい時間が続く。

 

 

水の女

あらゆるところから噴水のように本物の水を吹き出す女の人登場。

スーツの男たちは嬉しそうにその水を手に持ったグラスに注ぎ、これまたハイテンションで飲んではおかわり。

とにかく楽しそう。

でもその楽しい時間も、不気味なほど唐突な暗転で終わる。

 

 

・赤子

水の女神と同じ女性が腹に何かを持って、遠くを見つめるように現れる。

最前列客席の真ん前で、腹部から肌色の粘り気のある液体をボタボタこぼし始める。

それが2、3分ほど続いたのち、中から本物かとぎょっとするほど精巧な赤子が生まれる。

その液体は最前列の客席まで染みわたっていく。小麦粉で溶いて絵具で色をつけたようなものだけど、本当に体内から出てきた謎の液みたいで少し不気味である。

その後、女の人と赤子はスーツの男たちによって運ばれていくんですが、赤子の手で「バイバ~イ」ってするのが可愛かった笑

 

 

・杖をつく老婆

どこからともなく、両手に杖をついた全裸の老婆が現れる。

手にもった鈴をチリチリ鳴らしながら、無音の中こっちを見たのちドアへ向かってゆっくり歩いていく。

そのドアは引きも押しも、どちらの方向にも開くようになっていて、老婆がドアを抜け、ほんの一瞬ドアが開閉したタイミングで老婆の姿は完全に消え、若い女性がドアの前に立つ。

まるで、老婆がその若い女性に姿を変えたみたいに、ほんの一瞬で。

 

 

・水の羽

ドアから出てきた女性が、ドア近くの水道からバケツに水を入れる。

そして舞台少し奥に立ち、自分の足元に水をこぼしていく。ゆっくりと、一定の速度で。

すると、水が光の反射で壁に水面を映し出す。

うまくその女性に反射した水面がかからないよう、女性の両の壁にちょっとずつ形を変えながら、羽みたいに。

壁に反射した水面は白くて、歪にぐにゃぐにゃしているんだけど、それがあまりにも綺麗で息をのんだ。

女性はどんどん沈んでいく。正直しかけは全く見えない。舞台に段差を付けて、ちょっと高くしてあるのだ。

2階席や後ろの席は仕掛けが見えたかもしれないけれど、前の方はそれが見えないからより夢の世界にどっぷり浸かれる。

 

女性が沈み消るとスーツの男たちが現れ、突然床を外し始める。

床の下には水。みんなが床を外す中、一人だけ裸体の男性が物思いに耽るように、積み上げられた床に座ってたたずむ。

その横で、まるで上映が終わった映画館の掃除をするようにスーツ姿の男性が、モップで水浸しの床を掃除する。

その後、たたずんでいた全裸の男性は掃除するスーツの男が見る中、ドアに消えていき、舞台は終わる。

 

 

 

…書いててとにかく意味がわからなかったですが(笑)、ありのまま見たものを書き起こすとこんな感じで…。

他にもあるんですが、めっちゃ説明が難しくて…。梯子に挟まれるとか、わっかで踊るとか…。

私が映画とかを見てもなかなか現実に戻ってこられないタチなので、今回の周りの現実へ戻る速さには驚いた。

私は一発で起きられない、二度寝三度寝するタイプなので…。

余韻が長いとも言うのか。

 

妊婦の体液らしきもの(小麦粉を水で溶かして絵具で色付けしたものと思われる)や、水しぶきを模した消臭ビーズが最前列まで飛んでくるので靴やカバンが汚れるんですが、私には夢の世界の欠片を持って帰ってきたみたいで嬉しかったです。

周りは汚れるの気にしてたり告知が無い事気にしてる人多かったですが、なんだかそういうの、私にはナンセンスに思えるのです。

急流すべりとかイルカのショーとか、私はどんどん濡れてどんどん汚れたいタイプなので。

(怪我、落ちない汚れは流石に困りますが!)

 

 

晩御飯で食べたいっちゃんラーメンさん。エスニックでちょい甘め。

 

前もここでにんにくラーメン食べたけど、ここのはにんにく系とか真っ黒スープとか濃い目の方が好きだな

餃子も美味しかった!